動画の台本は、「誰に向けて、何を伝え、最後にどう動いてほしいか」を先に決め、それを短い文でつないでいけば書けます。文章がうまい必要はありません。話し言葉で、一文を短く、結論を先に置く。この三点を守るだけで、初めてでも見やすい台本になります。
台本を書く意味
台本なしで話すと、言い間違いや脱線が増え、動画が長くなりがちです。長くなると編集の手間が増え、見る側の集中も途切れます。台本があれば、話す内容と順番が決まっているので、撮影の時間も編集の時間も短くできます。
台本は、一字一句を読み上げるための原稿でなくても構いません。箇条書きの流れだけでも十分です。ただし初めのうちは、文章で書いたほうが話の抜けに気づきやすく、慣れてから箇条書きに減らす進め方が向いています。
台本を書く時間は、最初のうちは撮影や編集より長く感じるかもしれません。しかし、台本の段階で話の矛盾や抜けを見つけておけば、撮影後の撮り直しや編集での切り貼りが減ります。結果として、1本を仕上げるまでの総時間は短くなる傾向があります。
台本は、動画の品質を安定させる土台でもあります。調子の良い日と悪い日で話の出来が変わりにくくなり、複数の人で撮影を分担する場合も、同じ内容を共有できます。小さな事業者ほど、一人で全部をこなすため、台本で作業を軽くする効果は大きくなります。
手順1 動画の目的を一文で決める
最初に、その動画で見た人に何を持ち帰ってほしいかを一文で書きます。たとえば「初めて確定申告をする人が、準備する書類を3つ把握できる」のような形です。
目的が決まると、話す内容の取捨選択ができます。あれもこれも伝えたくなったとき、目的に関係ない話は別の動画に回します。1本の動画に詰め込みすぎないことが、見やすさと最後まで見てもらえる確率の両方につながります。
手順2 話す項目を3〜5個に絞る
目的に必要な項目を書き出して、3〜5個に絞ります。項目が多すぎると、動画が長くなるだけでなく、見る人が覚えきれません。
絞るときは、「これを言わないと目的が達成できないか」で判断します。補足的な話や例外は、概要欄に文章で書く方法もあります。動画では最も大事な流れだけを話し、細かい点は文字で補うと、動画がすっきりします。
項目を絞るときに迷ったら、「見る人が動画の後に説明できるか」を基準にします。3つの項目なら、見た人が友人に「こういう話だった」と説明できる量です。5つを超えると、記憶に残りにくくなります。
絞った項目は、それぞれに一言の見出しを付けます。「書類は3種類」「期限はいつか」「提出先はどこか」のように、見出しだけで流れが分かる形にします。見出しは、そのまま画面のテロップにも使えるので、編集の手間も減ります。
手順3 順番を決める
項目の並べ方には、よく使う型があります。
- 結論 → 理由 → 手順(悩みへの答えを早く出したいとき)
- 悩みの確認 → 原因 → 解決策(共感から入りたいとき)
- 手順1 → 手順2 → 手順3(作業の説明をするとき)
どの型でも、冒頭の数十秒で「この動画で何が分かるか」を示します。見る人は、自分に関係がないと感じたらすぐ離れてしまうためです。
手順4 話し言葉で書く
台本は、読む文章ではなく話す言葉で書きます。書き言葉のまま読み上げると、堅く聞こえ、耳で理解しにくくなります。
- 一文は40字以内を目安にする
- 「〜であるため」は「〜なので」に直す
- 主語と述語を近くに置く
- 同じ語尾が3回続かないようにする
書いた文を声に出して読み、息が続かない箇所や、つかえる箇所があれば、そこを短く区切ります。
話し言葉に直すときのコツは、一度書いた文章を「友人に説明するならどう言うか」に置き換えることです。たとえば「本書類を提出する必要がございます」は「この書類を出す必要があります」に、「〜を行うことが可能です」は「〜できます」にします。
また、ですます調で統一しつつも、同じ文末が続かないように変化をつけます。「〜です。」「〜ます。」が連続すると単調に聞こえるので、疑問形や体言止めを交ぜると、耳に入りやすくなります。ただし、くだけすぎて事業の信頼感を損ねない範囲に収めてください。
手順5 具体例を一つ入れる
説明が抽象的だと、見る人は自分の状況に置き換えられません。各項目に具体例を一つ添えます。ただし、実在しない人物の体験談や、根拠のない数字を作る必要はありません。自分の仕事で見聞きした一般的な状況や、手順を実演する場面なら使えます。
例を入れる場所は、説明の直後がよいでしょう。「たとえば〜の場合は」と入れると、見る人が理解を確かめられます。
手順6 最後に次の行動を一つ示す
動画の最後には、見た人にしてほしいことを一つだけ伝えます。チャンネル登録、概要欄のリンク先の確認、次の動画の視聴、問い合わせなど、複数あると迷うので、動画ごとに一つに絞ります。
「詳しい手順はこちらの動画で説明しています」のように、次の一歩を具体的に示すと、行動につながりやすくなります。
最後の案内は、台本の最初に書いておくと、全体の流れがぶれません。最後に言いたいことが決まっていれば、そこへ向けて必要な情報だけを逆算して並べられるからです。
案内の言葉は、冒頭で予告しておくこともできます。たとえば「最後に、準備に使える一覧のリンクをご紹介します」と最初に触れておくと、最後まで見る理由になります。
台本の確認方法
書き終えたら、次の三点を確認します。
- 声に出して読み、時間を測る(話す速さは人によって違うので、自分の速さで)
- 専門用語に説明があるか確認する
- 冒頭の30秒で、動画の目的が分かるか確認する
時間を測ると、予定の長さに収まっているかが分かります。長すぎる場合は、項目を減らすか、例を短くします。
確認の際には、第三者に読んでもらうのも有効です。家族や同僚に台本を渡し、分かりにくい箇所に印をつけてもらいます。自分では当たり前に感じる説明が、実は専門用語だらけだったと気づくことがあります。
印がついた箇所は、言い換えるか、例を足します。台本を何度か直しても、撮影のときに言い回しが変わることがあります。それは自然なことなので、大筋の流れが合っていれば問題ありません。
次にやること
最初の1本は、5分以内を目安に、項目を3つに絞って書いてみましょう。書いた台本をスマホで録音して聞くだけでも、不自然な言い回しやテンポの悪い箇所が見つかります。一度修正して撮影すれば、台本づくりの感覚がつかめます。数本続けると、自分の型ができ、書く時間も短くなっていきます。
台本は一度作って終わりではなく、公開後に視聴者の反応を見て直していくものです。コメントで質問が多かった箇所は、次の台本で説明を足します。反対に、すぐ離脱された箇所は、短くするか順番を入れ替えます。直した内容を台本のひな形に反映していけば、回を重ねるごとに書きやすくなります。




